国際物流総合研究所のセミナーで、「生成AIで業務を楽にするには? 〜物流現場の具体的な生成AI活用法〜」というテーマで1時間ほど話をしました。聞いてくださったのは物流会社の経営者や管理職の方が中心です。
準備の段階で決めていたのは、AIのすごさを語らないことでした。物流会社でよく聞くのは「AIを活用しろと言われるが何から始めればいいのか分からない」「ツールが多すぎて選べない」「ChatGPTを入れてみたが使い方が分からない」という3つの声です。この3つに順番に答える構成にしました。
何を使えばいいのか
最初に話したのは、AIを「モデル」と「アプリ・ツール」の2階層で考えるという整理です。
ニュースで話題になるのは、GPTやClaude、Geminiといったモデルの性能競争です。ただ、モデルは頭脳そのもので、それ単体では日々の業務は動きません。実際に業務を変えるのは、モデルを使って何かを作ったり、他のシステムとつないだりする「手足」の方です。
だから、業務効率化を考えるなら、モデルの性能を比べるより、手足になるアプリをどう使いこなすかを考える方が先です。非エンジニアでもファイルの作成や簡単な開発ができるアプリを1つ選べば、まずは十分だと伝えました。
どう使えばいいのか
次に、AIの使い方を4つの段階に分けて説明しました。
- 相談する: 改善基準告示や運送約款の確認、荷主への交渉メールの言い回しなど、壁打ち相手にする
- 作らせる: 点呼記録簿や運行指示書のテンプレート、見積書や研修資料のたたき台を作らせる
- 自社のデータやツールとつなげる: バラバラな発注書のフォーマットを揃えて販売管理システムに登録する、社内マニュアルを学習させて質問に答えさせる
- AIに考えさせ、実行させる: 時間指定や休憩を制約に入れた配車案を作らせて検証する、運賃改定のシナリオを試算させる
段階が上がるほどAIに任せる割合が増えますが、最初から4を目指す必要はありません。1と2で社内にAIを使う習慣ができ、3でデータが整ってはじめて、4が現実的になります。
一番反応があったのは、運賃計算のデモ
後半は、その場でAIを操作するライブデモにしました。
いくつか見せた中で、会場の反応がはっきり変わったのが、運賃の計算式をAIに組ませるデモです。「距離と車格でこう決まって、付帯作業があればこれを足して」と、普段運賃を決めている人が頭の中でやっている計算を言葉で説明する。それだけで、AIがその計算を行う仕組みを組み上げ、その場で動かして見せました。
説明から動くものができるまで、数分です。手元のExcelで毎回やっている計算や、ベテランの頭の中にしかない運賃表が、こういう形になるのかと、会場から具体的な質問が続きました。「うちの場合はこういう条件があるが、できるか」という質問が多かったのが印象的でした。それはもう、自社で使う場面を想像し始めている証拠です。
AIの説明をどれだけ丁寧にするより、自分の業務がその場で形になるところを見てもらう方が、はるかに伝わります。
何に気をつけるか
最後に、安心して使うための注意点を3つ話しました。
- AIに学習させない設定になっているか。法人向けプランは初期設定で学習対象外のものが多いですが、個人プランは設定の確認が必要です
- 入力してはいけない情報の線引き。パスワードやAPIキー、カード番号やマイナンバー、他社との守秘義務がある情報、顧客名簿。判断軸は「漏れたら即被害か」「自分に出す権利があるか」の2つです
- 人的ミスによる情報漏洩。過剰な権限付与、共有リンクの流出、退職者のアカウント放置。AIそのものより、こちらの方が確率は高いです
何も考えずに使うから危険なのであって、設定と運用ルールを理解すれば、AIは安心して使える道具です。
まとめ
セミナーの最後に伝えたのは、次の3つでした。
- まずはClaudeかChatGPTを入れてみる
- 学習設定がOFFになっているかを確認する
- 自社にあるデータを渡して、分析や作業をさせてみる
「AIのことは分かっている」と思い込むのが一番の落とし穴です。不安な点があれば、早めに相談してください。



