東京ビッグサイトで開催された「国際物流総合展 2026(第17回 Logis-Tech Tokyo)」に行ってきました。東・西ホールにまたがる大規模な展示会で、物流機器からソフトウェアまで幅広い出展が並んでいます。
今回は、一つの問いを持って会場を歩きました。「中小の運送・物流会社が、今すぐ手を伸ばせる技術はどれか」。巨大な自動化設備を入れられる会社は限られます。大掛かりなシステム改修も、多くの中小企業には必要ありません。その前提で、目立つ展示から地味な展示まで、手が届くかどうかという物差しで見ていきます。
フィジカルAI:迫力はあるが、手が届くのは「動かせる」ロボット

まず目を引いたのが、ロボットアームや自律走行ロボットが実際に動く「フィジカルAI」の展示です。複数のAMRがパレットを運び、ロボットアームが荷物を積み付ける一連の流れを、実物大のデモで見ることができました。映像や資料では伝わらない、動きの速さや安定感を体感できました。
ただ、こうした設備は床に固定し、専用のレイアウトを組んで、まとまった投資をして初めて成り立ちます。中小の倉庫にそのまま入れられるものではありません。

そのなかで現実的だと感じたのが、ロボットアームに車輪やクローラーが付いていて、置き場所を変えられるタイプです。床に固定する設備は、一度入れると動かせません。中小の倉庫では、扱う荷物や取引先の変化でレイアウトが変わることも珍しくないので、必要な場所に動かして使えるロボットは、大掛かりな工事なしで試せる選択肢になります。コンテナの中まで入って荷役を行うロボットなど、これまで人手に頼るしかなかった作業へ踏み込む展示も、この「動かせる」タイプに多く見られました。
搬送台車:いちばん身近で、いちばん効く

中小企業がすぐに手を伸ばせるという意味で、いちばん確実だったのは、倉庫内のモビリティや搬送台車といった、普段は目が行きにくい領域の展示でした。
倉庫で働く方は、ピッキングや運搬で1日に何キロも歩き、重い荷物を押したり持ち上げたりしています。この移動と運搬の負担は、外からは見えにくい一方で、身体への負荷や離職にも直結する大きな問題です。電動アシスト付きの台車や、階段を昇降できる搬送機のように、その移動や運搬そのものを楽にしてくれる道具が、着実に増えてきているのを感じました。1台から入れられて、レイアウトを変える必要もなく、効果は明日から出ます。

あえて「悪い現場の見本」を再現し、そこからの改善を提案するブースもありました。設備の導入以前に、現場の整理や動線をどう見直すか。お金をかけずに始められるという点では、これも中小企業にとって手を伸ばしやすい選択肢です。
AIによるシステム開発:作る前に、考えることがある
AIを使って会社専用のシステムを素早く組み上げる、という提案も複数見られました。手が届きそうに見えますが、ここは少し立ち止まって考えたいところです。話を聞いてみると、初期の構築は速くても、要件の追加や保守、利用料を積み上げると費用は決して安くない、というケースもありました。「速く作れる」と「安く使い続けられる」は別の話です。
それ以前に、そもそもそのシステムは本当に作る必要があるのか、という問いがあります。私たちが相談を受けるときも、まずここから考えます。
- 業務の流れを見直せば済まないか。二重入力や確認待ちのような手間は、システムを作る前に、仕事の順番や分担を変えるだけで消えることがよくあります
- ChatGPTなどに処理を頼むだけで足りないか。月に数回の集計や、書式の変換、文章のたたき台づくりなら、専用のシステムを作らなくても、既製のAIに依頼するだけで十分な場合が多いです
- それでも残るものは、お金をかける価値がある。日々の受注や配車、入出庫の記録のように、社内にデータを溜めていく部分は別です。ここは自社の資産になるので、きちんと設計して、きちんと費用をかけた方がいい
作らずに済むものは作らない。作るなら、データが溜まる場所にお金をかける。AIで開発が速くなった今だからこそ、この見極めの方が大事になっていると感じました。
視察を終えて
一番盛り上がっていたのはやはりロボットやフィジカルAIでした。ただ、中小企業の目線で歩いてみると、今すぐ手を伸ばせるものは別のところにありました。電動の台車、動かせるロボット、そして設備の前に動線を見直すこと。いずれも、今ある現場のまま、少しずつ楽にしていけるものです。探せば、手が届く規模のソリューションはちゃんとあります。
大きな設備も、小さな道具も、AIでつくるシステムも、「誰の、どの負担を減らすのか」が決まっていれば、選び方は自然と見えてきます。その整理から一緒に考えるのが私たちの仕事だな、とあらためて思った一日でした。



